大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和32(を)10 判決

主 文

原判決が本件につき刑法第二五条第二項を適用した部分を破棄する。

理 由

検事総長花井忠の非常上告申立理由は後記のとおりである。

本件記録を調べてみると、原裁判所である福岡簡易裁判所は昭和三二年五月六日

本件被告人が、第一、昭和三二年一月一六日午後六時三〇分頃福岡市a町bA商会

前においてB所有の自転車一台を窃取し、第二、同年三月二三目附起訴状添附犯罪

表記載のとおり(但し被害者CとあるをDに改める)同年一月三日頃から同年同月

二五日頃までの間一三回に亘り福岡市c町E方前外一二ケ所において同人外一二名

所有の自転車一三台を窃取したものであるとの事実を認定し、これに対し、刑法二

三五条、四五条前段、四七条、一〇条、二五条二項、二五条の二、一項後段を適用

して被告人を懲役一年六月に処する、但し本裁判確定の日から五年間右刑の執行を

猶予する、被告人を保護観察に付する旨の判決を言渡したこと、同判決は同年五月

二一日確定するに至つたこと、並びに被告人はさきに昭和三一年六月二八日福岡簡

易裁判所において窃盗罪により懲役一年、三年間執行猶予の言渡を受け、(本件の

犯行は前記の如く昭和三二年一月三日以降であるから、右昭和三一年六月二八日判

決の言渡があつた窃盗との間にいわゆる余罪の関係に立つものではない)本件につ

き原裁判所での審判当時被告人は右刑の執行猶予中のものであつたこと、そして原

判決は被告人が右の如く現に執行猶予中のものであることを前科調書によつて認定

していること明らかである。

ところで刑法二五条二項によれば前に禁錮以上の刑に処せられたことがあつても、

その執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡を受け情状特に憫諒すべ

きものであるときは再び執行を猶予することができるのであるが、一年を超える懲

役又は禁錮の言渡を受けたときは、その執行を猶予することはできないのである。

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しかるに原判決は、被告人が前示の如く執行猶予中のものであることを認め且つ被

告人を懲役一年六月に処しながら刑法二五条二項を適用して右懲役刑の執行を猶予

する旨の判決を言渡したのであるから、明らかに右刑法の条項に違反したものであ

つて、本件非常上告は理由がある。但し原判決は被告人のため不利益なものではな

いから刑訴四五八条一号本文に従い、その違反した部分のみを破棄すべきものとし、

裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

検察官 松村禎彦出席

昭和三三年二月七日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

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